小日記

日々のちょっとしたこと

時間の話

20代前半の頃に、「20代はあっという間だよ〜」とさんざん言われまくったけれど、本当にそうなのかな?と最近思う。

というのも、20代も普通に長い!と私は感じるから。
むしろ、実年齢+4年ぐらい生きてる感覚なのに、まだそんなに経っていないとは、人生って長すぎる。

このことをずっと年上の人に話したら、笑いながらこう言われた。
「人のため生きてるとあっという間だけど、自分のために生きてると普通に長いんだよ」


そんな話をした翌日、動物園に行ってきた。
類人猿のことが書いてある本を読んでいて、本物が見たくなったのだ。自分と遺伝子も形態も似ていて、ちょっと違う方向に進化が枝分かれしただけなのに、絶滅しかけているらしい。進化の途中まで私たちと同じ生き物だったのに切なくなる。

動物園にいた彼らは人間に姿形がそっくりだった。手も、耳も、体つきも、見れば見るほど似ていた。
大学生数人がチンパンジーの動きを見て笑って騒いでいた。チンパンジーは笑われていることにも、種の存続のことにも興味がなさそうだった。

日本の動物がたくさん展示してある動物園だった。
私は月に一回奥多摩に自然観察に行っているけれど、野生動物が直接見られることはほとんどない。
獣道やヌタ場(動物が泥浴びをする場所)に仕掛けたトレイルカメラに映っているのを見たり、レンジャーさんが事故で死んだ動物を拾ってとっておいてくれたのを仮剥製にしたり、というのはあるけれど。

ゾウやトラなどのめずらしい動物よりも、森で足跡やフンを見ているイノシシやアナグマのほうが、「本物だー!」と思ってテンションが上がった。


気持ちよさそうに寝ている!


作り物みたいな色をした鳥。


「森羅万象はまばたきひとつであなたを捉え、運んでいく」
これは、アランの『幸福論』に出てくる、好きな文章のひとつ。

チンパンジーやゴリラが生きているいまの時代も、ドードーニホンオオカミが生きていた時代も、そして自分が「長すぎる!」と感じている20数年の人生も、森羅万象からしたら一瞬にすぎないんだろうなぁ。
人のために生きていても、自分のために生きていても、まばたきひとつで私たちは未来へ運ばれて行く。

剥製作りを教えてくれている先生は、「時間が過ぎるのは惜しいと思うのに、楽しみな日を待ち遠しく思うときもあって、人間って矛盾した生き物だなぁ」と言っていた。私も本当にそう思う。
どんなときも、誰にでも、時間は平等に過ぎて行くのにね。