小日記

日々のちょっとしたこと

子供の領分

締め切りを1日過ぎても、どうしても子供向けの原稿が書けない。
二年前まで児童書編集の仕事をしていて、当時はいくらでも思い付いたし何案も出せたのに、「アイディアが降ってくる」だとかそんなクリエイティブなことは必要ないのに、何も思いつけなくなっていることにちょっと落ち込んだ。こんなことってあるんだね。

当時の気持ちに近付こうと、遅くまでやっている本屋さんに、ひと駅歩いて行ってみる。
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秋の涼しい風が気持ちよくてそれだけで機嫌がよくなる。新学期に合わせて刊行する本を担当することが多かったので、涼しさを感じ始めるこの時期はいつも、先々のスケジュールの忙しさにドキドキしているころだった。

本屋の児童書コーナーに行くと、会いたい人たちをたくさん思い出した。「こういう絵本はあの人が好きだったな」とか、「この絵の感じが好きと言ったら、好きそう、と言われるだろうな」とか。「好きそう」と言われることは好きだな、とも思った。
懐かしくなって、その頃に戻りたいような気持ちに一瞬なったけれど、感傷に飲まれて行動するとあとで必ず後悔するものだと今は知ってる。自分だって誰だって変わっていくし、すでに起きたことを変えることはできないし。

子供向けの本は、サービス精神旺盛で飽きさせない工夫が素敵。「わかる人にだけわかればいいのよ」と佇んでいるのではなく、どの表紙も「こっちを向いて〜!」と気を引こうとしてるところもいい。
注文の多い料理店』と和田誠のイラストの相性は最高。難しい漢字を使いつつ全ルビにしてる大人向けの絵本はいやらしくて好きじゃない。『オズの魔法使い』は何度読んでも登場人物の設定と性格に愛おしくなる。

宮沢賢治のおはなし (2) 注文の多い料理店

宮沢賢治のおはなし (2) 注文の多い料理店

オズの魔法使い (岩波少年文庫)

オズの魔法使い (岩波少年文庫)

児童書編集の会社に拾ってくれた恩人から、ヨーロッパ旅行中に「帰ってきたら食事でも行こうよ」と誘われていたのを思い出し、連絡をしようかと思ったけれど、やっぱりやめて携帯を鞄にしまう。
報告したいことも、したくないこともたくさんあって、「最近どう?」と聞かれたときに、色んなこと話したいなと思えるようになってから、遊びに行こう。

児童書コーナーを2時間も(!)うろうろしたところでやっと素案が思い浮かび、そこから出たらうっかり気持ちが切り替わってしまいそうだったので、携帯のメモ帳を開いてその場で原稿を書いた。