主役の梅の木
1月末に脳梗塞で倒れ、入院した祖父。
先日退院したものの、風邪をひいて自宅療養中だというのでお見舞いに行ってきた。
以前より、祖父に会うと「こっちに帰ってきて早くいい人を見つけなさい」と言われていた。
いつも人に言わているときのように適当に流せば良いのだが、2年前に恋人と別れてなかなか立ち直れない間にその言葉がしんどくなってきて、祖父に会うのがイヤで避けに避け続けていたのである。
両親も「会いたくないなら会わなくていいよ〜」と安穏としていたし。
そんなわけで、しばらく祖父と疎遠になっていて、その矢先に起きた脳梗塞。
「どうしても出来ないことやしたくないことを、善意で勧められるのはすごくつらい」
という気持ちを、尊重はされたいが、主張したところで子供っぽいなぁと思い、先月同様にしれっと訪ねてきた。(先月の様子→ 口の悪い老人たち - 小日記)
祖父の家はもう他人の家だ。
わたしは小学校を卒業するまで、毎日この祖父母の家に帰宅し、夕食を食べていた。
だから、その後も自分の家同然に、インターホンを鳴らさずに「ただいまー」と言ってドカドカ玄関を上って行っていた。
今は、叔父(祖父の長男)夫婦が同居してくれている。
わたしはインターホンを鳴らし、「お邪魔します」と言って家に上がる。
祖父は大きな音でテレビを見て、風邪の様子を話してくれた。
わたしはそれを聞きながら、大好きだった祖母の仏壇に慣れた手つきでお線香をあげる。
庭には咲き始めの梅の花。
この立派な梅の木は、わたしが物心つく頃から…きっとその前からずーっと、この庭の主役。
毎年、4月初旬に満開になる。
祖父が「満開になったら、窓から手が届くほどになるからね」と言っていた。
知ってるよ。それがとてもきれいなことも、花をつけた枝に触れるうれしさも。
小さい頃から今もずっと。